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はじめに
.独立までは十数年ほど窯元の職人としてすごしてまいりました。一言で陶磁器製造業や陶芸家と言いましても各々様々な形態があります。当工房は家族で営む小さな陶磁器工房です。一言でいえば家内制手工業(手工芸?)といったところでしょうか。
手で仕上げること
陶磁器には様々な製法、技法がありそれぞれに長所、短所があります。当工房では全ての工程を手作業で行っており、主にロクロ成型、タタラ成型による素地に手描き、手彫りの装飾を施しております。手作業による成型は大量生産には向きませんが、一個からでも製作することができ、熟練の職人であれば数千単位のロットでもこなすことができます。少量~中量の製作では工程の大部分が人の手によるものであるため、大掛かりな機材の調整や設備が必要なく、小回りが利く分その本領を発揮します。そして型などでは写しきれない繊細な形状、細工に手を入れることができるのも陶芸家や手工芸の強みであります。
機能的であること
少~中量生産の家内制手工業(手工芸?)の強みは細工を施すことの他に、機能的なものを作るといった面でも有利に働きます。工業的な「ものつくり」ではデザイナーの意図をすべて製品に反映させることは難しくなります。機材の壁、ロットの壁、納期の壁、生産コストの壁、他にも様々な壁を乗り越えていくたびに、やむなくディチューンされる事もあります。もちろん手工芸でも少なからずその影響は受けますが、職人の練度、経験の積み重ねによってそれらを補うことができます。当工房の製品は暮らしのデザインの一部として、見た目のデザインと機能のデザインのバランスに重きを置いて製作しております。食卓のアクセントになり、且つ使い勝手が良く、機能すべき部分は当たり前に機能するということは必須です。
様々な生活スタイルへの汎用性
現代の生活スタイルは実に多様で、その食卓でも和、洋、中をはじめ様々な食材や料理が登場します。その食卓専用に器を揃えていけば器はいくらあっても足りることはないでしょう。食卓がステージであれば花形の役者がおり、それを邪魔することなく引き立てる脇役や裏方があって上手くいくのかと思います。生活の空間、食材、お料理など様々なスタイルの様々な色をより引き立てられるよう時にはアクセントになり、時にはお料理に寄り添うフレーム(額縁)になれるような汎用性をもたせる事によって、世代をこえて愛用して頂けるのではないかと思っております。
最後に
これまでの経験を活かし、新たに学んだことを加味しつつ製作に励んでおります。使いやすく、それでいて他のものとはちょっと違う、生活に身近な工芸をいつも、いつまでも楽しんで頂ければ幸いです。
向山窯櫻越工房 増渕篤宥
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